Cross Section A-A

断面A-A・山本秀夫のプロダクトデザイン

製品やプロトタイプの核となるアイデアを断面図によって解説した展覧会。
グラフィックデザイナーの佐藤卓氏が企画し、2007年3月21日から4月16日まで、松屋銀座デザインギャラリーにて開催された。


断面A-A 

果物や野菜は、切る方向によって様々な切り口を見せます。
木材も切る場所によって、素直な柾目が現れたり力強い板目が現れたりします。
料理人や木工職人など、材料を扱う専門家たちは材料をどう切ればよいかを良く知っています。

ものをある方向で切り分け、その切り口を描いた図を「断面図」といいます。
プロダクトを設計するとき、外形図のほかにいくつもの「断面図」を描きます。
外形図だけでは伝えきれない製品の構造や材料の厚み、部品同士の関係、形状の微妙な変化などを「断面図」を使って表現する必要があるからです。

断面の形そのものが製品にとって大きな価値になることも少なくありません。
製品を軽くするためのかたちや、強くするためのかたち、持ちやすくするためのかたちなど、製品を使いやすくするための重要なアイデアは「断面図」を描いていて生まれることが多いのです。
さらに、製品を軽く見せるかたちや強く見せるかたち、表面に現れる質感や美しい陰影なども断面の検討なしには生まれません。
私にとって「断面図」を描くことは、最も楽しく刺激的で発見の多い作業です。

果物や木材と異なり、プロダクトが製品になってしまったら普通断面に出会えることはないでしょう。
この展覧会はみなさんが普段目にすることのない断面に焦点を当てました。
「断面図」には外形からだけでは決して窺い知れない、ものの本質が隠されているのです。

2007年3月
山本秀夫